渡辺京二氏の訃報が届きました
毎年かなりの本を読む私ですが、衝撃を受け何度も読み返す本はそんなに多くない。渡辺京二さんの「逝きし世の面影」はまさにそんな一冊。近代に生きる我々は我々のものの考え方をあたりまえに感じ、それ以前の時代に生きた人々も同じように考えたり、感じたりするものと思い込んでいる。しかし実はかつての日本人のものの考え方は全く我々とは異なったものであり、価値観はもとより、身体の生理的な反応にいたるまで違ったものでした。渡辺さんは、幕末に我が国を訪れた外国人を通して当時の日本人がどんな世界に生きていたのかを浮かび上がらせます。「個人が共同体のために犠牲になる日本で、各人がまったく幸福で満足しているように見えることは、驚くべき事実である」「蒸気の力や機械の助けによらずに到達することができる限りの完成度をみせている」単純な日本すごい論に堕することなく丁寧に失われた文明の面影を見せくれる今後永く読み継がれるであろう名著です。ご冥福をお祈りいたします。